東京高等裁判所 昭和33年(ネ)1930号 判決 1959年4月08日
控訴人(原告) 上野茂三
被控訴人(被告) 東京国税局長
原審 東京地方昭和三三年(行)第二七号(例集九巻九号158参照)
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
控訴人訴訟代理人は、第一次的請求として、原判決を取り消す、被控訴人が控訴人に対し昭和三十三年三月一日別紙物件目録記載の建物についてした公売処分を取り消す、訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする、との判決を、予備的請求として、原判決を取り消す、被控訴人が控訴人に対し昭和二十五年十一月二十七日別紙物件目録記載の建物についてした差押処分を取り消す、訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする、との判を求め、被控訴人指定代理人は控訴棄却の判決を求めた。
当事者双方の事実上の陳述は、原判決の事実摘示に記載されているとおりであるから、ここにこれを引用する。
理由
一 第一次的請求について
被控訴人が控訴人に対し、その主張の滞納処分として昭和二十五年十一月二十七日本件物件につき差押処分をし、次いで昭和三十三年三月一日附で同年同月十二日本件物件を公売に付する旨を通知したことは当事者間に争がなく、右三月十二日に本件物件に付されなかつたことは弁論の全趣旨から明らかである。
控訴人は右のような公売の通知があつた以上すでに公売処分をする旨の決定があつたのであるから公売処分があつたものとみるべきであると主張するが、抗告訴訟の対象となるべき公売処分が行われたというためには、これにより関係者に対し具体的な法律的効果を生じさせる処分があつたことを要するものと解すべきところ、租税滞納者に対する公売期日の通知は法律上要求されるものではなく従つてこれにより関係者に対し何ら法律上の効果を生じさせるものではない(行政の便宜上行われているものと解される。)から、右のような通知があつたからといつて、これによりすでに公売処分がなされたとはいえず、また、右のような通知があつた以上はすでに行政庁の内部では差押財産を公売に付する旨の決定がなされているものと推定されるけれどもこのような決定は単なる行政庁の事務処理上の内部的な意思決定にすぎず、関係者に対し何ら法律上の効果を生じさせるものでないからそれ自体を抗告訴訟の対象とすることはできないものと解するのが相当である。(なお、本件物件の公売につき公告があつたことは控訴人の主張立証しないところである。)
そうすると本件においては抗告訴訟の対象となるべき本件物件に対する公売処分はまだなされていないというべきであるから、控訴人の第一次的請求は取消の対象を欠く不適法な訴といわなければならない。
二 予備的請求について
控訴人の予備的請求に対する当裁判所の判断は、本件のような国税徴収法に基く差押処分の取消又は変更を求める訴には行政事件訴訟特例法第二条の規定の適用はないものと解すべきであることを附加するほかは、原判決の理由中予備的請求に関する部分の記載のとおりであるから、ここにその記載を引用する。
してみれば控訴人の本訴請求はいずれも不適法であるから、これを却下した原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから民事訴訟法第三百八十四条によりこれを棄却すべきものとし、控訴費用の負担について同法第八十九条及び第九十五条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 川喜多正時 小沢文雄 位野木益雄)
(別紙目録省略)